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「森の道」−人と森をつなぎ直す「細い道のネットワーク」
「木は人の足音を聞いて育つ」といいます。農村に住む人が減り、高齢化も進んで、里と森の間は遠ざかってしまいました。人が訪れなくなった森では、手入れ不足が深刻です。
 「もりねっと」は解決法の一つとして、人と森をつなぎ直し、手入れや間伐などにかかる経費を下げる「森の道」(林内路網)づくりを提案しています。

樹木を縫って斜面を登る「森の道」 田邊さんが岐阜県のヒノキ林に造成した作業道
 
「森の道」は幅3mほど。低コストで細く壊れにくい道を毛細血管のように林内に設け、森の手入れや収穫に活用します。台風が多く、急傾斜の四国で始まった技術で、これを北海道の土質や気象に合うように改良している途中です。
   
「森の道」の目的
どうやって造るの?
「森の道」の考え方
比べてみたら
   
 
「森の道」の目的
なぜ細く、柔軟な道がいいのでしょう。まず、盛り土・切り土の量が減り、工事費はぐんと安くなります。通り道にある木を切る本数が減り、狭い林にも道がつきます。道から森に自由に出入りできるのも、大事な点です。道幅が狭いと上空を木々が覆うため、雨に打たれにくく、雑草の繁茂も抑えられます。
 路網は大型トラックではなく、小型トラックや林内作業車が走ることを想定しています。間伐の際、大型機械が森の中を走り回ると、木の根や幹が傷んでしまいます。これを防ぐため、機械は道だけを走り、その分、きめ細かい路網にします。つまり、一時的な機械の通り道ではなく、末永く、森のあちこちに出入りするための道なのです。

「森の道」なら小型の林内作業車でも安全に
効率よく間伐した木の集材ができます
樹木の間を縫う「森の道」は、
伐採が必要な支障木も少なくなります

細くても平らな道があれば、小さな作業車でも安全に仕事ができ、移動も早くなります。軽トラックで気軽に巡回ができ、簡単な手入れや山菜、キノコほだ木などの採取ができます。自分の山を見回って、「森の手入れがしたくなる道」になるのです。
2011年6月に「もりねっと」が開いた「森の道」普及現地研修会
 
どうやって造るの?
安くて丈夫な道が簡単にできるのでしょうか。まず、10トン以上もある大型機械は、もっと強い規格の基幹道を走ってもらいます。「森の道」はそこまでの網の目をつくる、毛細血管なのです。
 四国で始まった「四万十(しまんと)式作業道」の技術をベースにしていますが、その基本は次の4点です。
1,表土を活用し、路肩に層状に積み重ねて崩れにくくする
2,道幅全体を深く掘って土を混ぜ返し、均一な路盤をつくる
3,雨水が集まって土を洗い崩さないよう、水を散らす工夫をする
4,カーブでは路肩をしっかり盛り、緩やかで曲がりやすい曲線にする
 施工方法は実習してもらうしかないのですが、作業は「路線を考えながら通り道の木やササを切る先行伐倒手」と「バックホー(ユンボ)のオペレータ」の二人一組が基本です。

オペレータ養成講習で、勾配やルートの
取り方を解説する田邊由喜男さん
研修生が木の根掘り出しに四苦八苦。
掘った木の根は路肩を守る貴重な建設材料

特にオペレータの腕前は重要です。最小限の土を動かして、最も走りやすい路線と傾斜の道を造っていきます。つまり、斜面を見てできあがりの道をイメージし、そのために最適な位置にバックホーを進めて、バケットの前後の動きで土を”配分”します。田邊さんは「道は空中にも土中にも造る」と表現します。
 実際に出来た道は、路肩が固く、斜面下方に崩れた土を流すことはありません。植物の根が絡まった表土はそっと積み重ねられ、木の根や石も大事な補強材になっています。路盤が均一なので、片側がへこんだり、流されることもありません。
 でも、北海道の厳しい凍結や雪解け、春の出水にどう耐えるかは、もっと工事例を重ねて検証する必要があります。「森の道」は森を育てると同時に、森や人と一緒に育つ道なのです。

路盤を均一にするため、石は掘り出して路肩へ。大岩もうまく掘ると簡単に出てきますが、 上達するには時間がかかります 流れを横断する場所では、
上流に水をため、 パイプで水を流し出します
 
「森の道」の考え方
北海道では、冬の伐採から林業が始まり、作業機械が林内を走り回るのが普通です。しかしそれでは、生産経費は安くても、残された樹木や若木にはよくありません。
 「森の道」は作業のついでに道をつけるのではなく、長期的な森づくりのため、まず森に安定した道を造ることから始めるのです。伐採した木を運び出すためだけではなく、山主さんが森に入り、普段から巡回や手入れ、山菜などの収穫もできるようにします。また、間伐遅れの細い木が多い場所でも、きめ細かい路網は、柔軟な作業と経費削減に役立ちます。

オペレータ養成の一期生は7人。
苦労して造ったカーブで記念写真
壊れない道を造るための
ポイントを解説する田邊さん

もちろん、すべての森にこの「森の道」の考えが当てはまるわけではありません。奥山では、大型機械の活用が効率的でしょう。しかし、「山林所有者は経営意欲がない」などと決めつけてしまわずに、山主さんが森に入れる選択肢を用意することは、地域や社会全体の森への関心を高め、多様で健全な森づくりにつながる、と「もりねっと」は考えています。

安全のため、斜面にまず平らな足場をつくり、
バックホーを常に水平に保ってから、 土を前後に分配します
完成直前の「森の道」でひと休み。
森を歩きたくなる道になりました
 
比べてみたら
写真を見比べてください。同じ森のすぐ近くに出来た道ですが、左が「森の道」、右は公共事業で施工された「基幹作業道」です。

森を壊さずにきめ細かく走る「森の道」 公共事業で造成された基幹作業道。
立派ですが、森に入るのは難しく、
伐開幅も大きくなります

「森の道」は幅3メートル、二人一組で、1日に延長数10メートルも施工できます。
 一方、基幹作業道は幅が3.5メートルと大して変わらないのですが、盛り土や切り取り斜面が大きく、伐採の幅は9-15メートルにも達します。こうなると、開いた空間に風が吹き抜け、立ち枯れや風倒の原因にもなります。
 盛り土や斜面が高いため、道から森林内に人や作業車が入るのも大変です。大型トラックが移動するのにはいいのですが、この道で直接森づくりをするのは無理があります。
 施工経費は「森の道」が1メートルあたり2000円前後、基幹作業道はおよそ15000円です。目的も規格も全く違う、ということがおわかりいただけるでしょうか。
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